各士業の職域について



1.はじめに

 専門家に対して、法律事務や行政手続き、法務、労務などを委託する場合、「○○士といういわゆる士業が多数存在し、その業務をいずれの士業に委託することができるのか、それぞれの士業の専門はどのような分野であるのか、迷ってしまうことはありませんか?


 本記事では、こうした士業の職域について、弁護士、行政書士、司法書士、弁理士に関して、それぞれの士業の根拠法を参照しながら解説します。


2.弁護士とは

弁護士に依頼できること

  1. 訴訟の代理人

  2. その他法律事務一般

 

 弁護士とは、訴訟をはじめとする法律事務一般を職域とする士業です。その起源は明治期の「代言人」に遡り、1893年に弁護士法が制定され、名称が「弁護士」に改めれらるとともに、弁護士試験が実施されるようになりました。さらに1936年の弁護士法改正により、法律事務が弁護士の独占業務として法定され、その地位を確立しました。


 弁護士法72条により、弁護士以外の者が法律事務を報酬を得て行うことは「非弁行為」として禁じられており、とりわけ当事者間に紛争性のある事案については、他士業であってもこれを扱うことに厳格な規制があります。ただし近年は法改正により、「認定○○士」「特定○○士」等の資格内資格者として、一定類型の訴訟をはじめとする裁判手続きや仲裁・和解手続きに限り、他士業に対しても紛争処理が限定的に認められる傾向にあります。


弁護士の使命

弁護士法一条:

1 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。

2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。


弁護士の職域

弁護士法三条: 

1 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。

 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。


 基本的には弁護士が行う法律事務に制限はありません。登記申請業務については司法書士会と弁護士会においてかつて争いがありましたが、東京高判H11.7.29において「その他一般の法律事務」として弁護士も格別の制限なくこれをなしうるとして決着がつきました。


3.行政書士とは

行政書士に依頼できること

  1. 許認可申請手続き

  2. 入国管理局への手続き

  3. 権利義務又は事実証明に係る書類の作成

 行政書士とは、行政手続き及び法的な書類作成の専門家であり、建設業許可、産廃業許可などをはじめ許認可の代理申請業務や遺言書、契約書の作成業務などをすることができます。その起源は大正時代の内務省令による「代書人」に由来します。戦後の1951年に至って、請願に基づき議員立法によって行政書士法が制定され、これに伴い名称も現在の「行政書士」となりました。


 行政書士には資格内資格としてさらに「特定行政書士」および「申請取次行政書士」が定められており、行政書士がさらに所定の試験の合格や講習の受講を経ることにより、これらの資格を得ることができます。「特定行政書士」は、その申請した許認可について、行政不服申し立て手続きを代理することができ、「申請取次行政書士」は、入国管理局への申請を本人の出頭を要することなくすることができます。


行政書士の使命

行政書士法1条

この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。


行政書士の職域

行政書士法一条の二:

1.行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

行政書士法一条の三:

1 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為について代理すること。  前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。  前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。  前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。


 行政書士の職域の特色として、その職域においてすることのできる業務が広範多岐に渡り、各分野に専門特化した行政書士や、他士業と兼業する行政書士が多いことが挙げられます。また士業において唯一、その根拠法が内閣提出法案ではなく議員立法によっています。


4.司法書士とは

司法書士に依頼できること

  1. 商業登記、不動産登記の登記申請

  2. 筆界特定の手続き

  3. 成年後見人、財産管理人等の業務

 司法書士とは、登記申請をはじめ法務局に対する手続きの専門家であり、これにともなって不動産の売買や抵当権の設定、会社設立、株式の発行などの企業法務、相続手続きなどにおいて欠くことのできない存在です。その起源は明治期の司法職務定制における「代書人」に遡り、1935年に司法書士法が制定され「司法書士」と改称しました。1950年に新憲法下での司法書士法が制定され、その後簡裁代理業務などを追加する改正がなされ、現在に至ります。


 司法書士の資格内資格として「認定司法書士」が定められており、所定の講習を受け試験に合格した場合、訴額140万円以内の簡易裁判所の管轄に属する民事訴訟や訴え前の和解、民事保全などの裁判手続きについて、これを代理することができます。


司法書士の使命

司法書士法1条:司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。


司法書士の職域

司法書士法三条:

司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

 登記又は供託に関する手続について代理すること。  法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。  法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。  裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。  前各号の事務について相談に応ずること。  簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起、再審及び強制執行に関する事項については、代理することができない。  ~(中略)~  民事に関する紛争であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。  筆界特定の手続であつて対象土地の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。

 前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。(以下略)


 司法書士は法務局に対する手続きの専門家ですが、それと同時に、2002年の司法制度改革に伴う司法書士法改正による認定司法書士の制度の導入により、訴額140万円未満の民事事件については、弁護士に準ずる法曹としての役割を担うに至っているといえます。


5.弁理士とは

弁理士に依頼できること

  1. 知的財産(特許権、意匠権など)の登録

  2. 国際特許出願(PCT出願など)の手続き

  3. 知的財産権に関する不服申し立て・取り消し争訟

  4. 知的財産権に関する契約交渉・法律相談

  5. 知的財産権訴訟の保佐人

 弁理士とは、特許権、意匠権、実用新案権、商標権、著作権など知的財産権の専門家であり、知的財産権制度の専門性により、不服申し立てや審決取消訴訟の提起をはじめ、知的財産権に関する法律事務について広範な職域を担っています。その起源は明治期の「特許代理業者登録規則」に遡り、1909年に「特許弁理士」として特許申請業務が独占業務として法定され、1921年の弁理士法により「弁理士」と改称されました。


 弁理士は、特定侵害訴訟代理業務試験に合格した旨の付記を受けることにより、特定侵害訴訟においてその代理人となることができます。


弁理士の使命

弁理士法1条

弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。


弁理士の職域

弁理士法四条: 

1 弁理士は、他人の求めに応じ、特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する行政不服審査法の規定による審査請求又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。

 弁理士は、前項に規定する業務のほか、他人の求めに応じ、次に掲げる事務を行うことを業とすることができる。

 関税法第六十九条の三第一項及び第六十九条の十二第一項に規定する認定手続に関する税関長に対する手続並びに同法第六十九条の四第一項及び第六十九条の十三第一項の規定による申立て並びに当該申立てをした者及び当該申立てに係る貨物を輸出し、又は輸入しようとする者が行う当該申立てに関する税関長又は財務大臣に対する手続についての代理

 特許、実用新案、意匠、商標、回路配置若しくは特定不正競争に関する事件又は著作物に関する権利に関する事件の裁判外紛争解決手続であって、これらの事件の裁判外紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として経済産業大臣が指定するものが行うものについての代理

 前二号に掲げる事務についての相談

 特許法第百五条の二の十一第一項及び第二項に規定する意見を記載した書面を提出しようとする者からの当該意見の内容に関する相談

 弁理士は、前二項に規定する業務のほか、弁理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、次に掲げる事務を行うことを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

 特許、実用新案、意匠、商標、回路配置若しくは著作物に関する権利若しくは技術上の秘密若しくは技術上のデータの売買契約、通常実施権の許諾に関する契約その他の契約の締結の代理若しくは媒介を行い、又はこれらに関する相談に応ずること。

 外国の行政官庁又はこれに準ずる機関に対する特許、実用新案、意匠、商標、植物の新品種又は地理的表示に関する権利に関する手続に関する資料の作成その他の事務を行うこと。

 発明、考案、意匠若しくは商標、回路配置、植物の新品種、事業活動に有用な技術上の情報又は地理的表示の保護に関する相談に応ずること。

 特許、実用新案、意匠、商標若しくは回路配置に関する権利若しくは技術上の秘密若しくは技術上のデータの利用の機会の拡大に資する日本産業規格その他の規格の案の作成に関与し、又はこれに関する相談に応ずること。

弁理士法五条: 

1 弁理士は、特許、実用新案、意匠若しくは商標、国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願、回路配置又は特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。

 前項の陳述及び尋問は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。

弁理士法六条:

 弁理士は、特許法第百七十八条第一項、実用新案法第四十七条第一項、意匠法第五十九条第一項又は商標法第六十三条第一項に規定する訴訟に関して訴訟代理人となることができる。

弁理士法六条の二:

1 弁理士は、第十五条の二第一項に規定する特定侵害訴訟代理業務試験に合格し、かつ、第二十七条の三第一項の規定によりその旨の付記を受けたときは、特定侵害訴訟に関して、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、その訴訟代理人となることができる。

 前項の規定により訴訟代理人となった弁理士が期日に出頭するときは、弁護士とともに出頭しなければならない。

 前項の規定にかかわらず、弁理士は、裁判所が相当と認めるときは、単独で出頭することができる。


 弁理士の職域の特色として、その業務の対象である特許権が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」である「発明」を保護するものでることから、自然科学的な素養が求められ、したがって他士業と比較して際立って、自然科学を専攻した者が弁理士となることも多いことが挙げられます。