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改正民法で新設された定型約款について

更新日:2022年11月8日



オンラインショップの利用規約やガスの供給契約のように、事業者が用意した定型の契約書により不特定多数の者との取引が行われる場合、その契約書のことを「定型約款」と言います。民法上は、以下のように規定されています。枝番となっていることからもわかるように、2020年施行の民法改正により新たに追加された条文です。


民法548条の2抜粋

定型取引ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。
定型約款定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。

定型取引の成立


定型約款」と一般的な契約書の違いとして、一般的な契約は、契約当事者がその内容を個別に合意することによりはじめて有効となりますが、「定型約款」による取引においては、契約当事者がその内容を個別に合意することは必要ではなく、単にその「定型約款」を契約の内容とすることを合意することにより、その「定型約款」に定める内容で、有効に契約が成立します。


オンラインショップの利用規約の条文一つ一つを検討して購入をする消費者はほとんどいませんが、その売買が、支払期日や送料、損害賠償などについて、その利用規約により規律されることになることを想像するとわかりやすいでしょう。


ただしこのような定型取引が有効であるためには、約款を提供された当事者の保護の観点から、「定型約款を契約の内容とする旨の合意をした」ときか、又は、「あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を表示していた」ときである必要があります。


定型約款の変更


定型約款」にあたる場合、定型約款を準備した当事者は、契約締結後であっても、その定型約款を相手方の同意なく一方的に変更することができます(民法548条の4)。これは、一方的な変更が可能な点で、一般的な契約とは大きく異なる点です。


ただし、こうした変更は、その変更が「相手方の一般の利益に適合するとき」か、またはその変更が契約の目的や変更の程度、変更予告の有無など、諸般の事情に照らして「合理的なものであるとき」に限ってすることができ、またこうした変更をする場合には、変更をする旨、変更の効力発生日、変更の内容などについて、インターネット等を用いて約款の利用者に周知しなければならなりません。


定型約款準備者の義務


定型約款を使用する場合には、上記の変更時の周知義務のほか、利用者保護の観点から、いくつかの特則があります。


まず情報提供義務として、定型取引をする場合には、相手方から求められたときは、いつでもその定型約款の内容を提示できるようにしておかなければなりません。ただし、書面やPDFを交付する等の方法により、利用者に定型約款をあらかじめ提供していたときは、その必要はありません。


また定型約款の内容について「相手方の権利を制限」する条項および「相手方の義務を加重する」条項については、「定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らし」て、信義誠実の原則に反し、「相手方の利益を一方的に害すると認められる」場合には、その条項は無効となります。


たとえば、損害賠償義務を一方的に負わないものとしていたり、瑕疵担保責任を全面的に否定するなど、過大な要求をしていた場合には、相手方がこれらを見落としていたとしても、それを奇貨として、そうした要求を定型約款によりすることはできないということとなります。

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