独占禁止法について

更新日:11月8日


 目次   

  1. 独占禁止法とは

  2. 私的独占

  3. 不当な取引制限

  4. 不公正な取引方法

  5. 独占的状態

  6. 企業結合の規制

  7. 事業者団体の規制

  8. 独占禁止法に違反した場合

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独占禁止法とは


独占禁止法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」とされ、事業者による自由な競争を確保し、消費者の利益と国民経済の発展を期するため、市場の独占をはじめとして事業者がその競争を制限する行為について規制をしています。経済の自由競争を促進するというその機能面から「競争法」と呼ばれることもあります。


 独占禁止法は、事業者による競争について、以下の6つの分野から規制をしています。

  1. 私的独占他の事業者を排除し、又は支配して、その市場を支配すること

  2. 不当な取引制限相互にその事業活動を拘束し、共同で取引制限を遂行すること

  3. 不公正な取引方法自由競争を困難にする恐れのある性質を有する取引をすること

  4. 独占的状態市場シェアによる市場支配力を行使し、不当に利益を得ること

  5. 企業結合の規制一定以上の市場シェアを有することとなる企業結合に対する規制

  6. 事業者団体の規制事業者団体による一定の競争制限行為に対する規制

ただし上記に該当する行為が必ずしもすべて問題となるわけではなく、あくまでもその行為が自由競争を阻害する効果を有する場合に限って独占禁止法の規制を受けます。企業の事業活動は、それ自体が大なり小なり競争相手を阻害する効果を有しているためです。例えば熱心な営業活動が功を奏して、相手方が既存の取引先との契約を打ち切ったとしても、そうした営業活動が「不公正な取引方法」となるわけではありません。


とりわけ「私的独占」および「不当な取引制限」に該当することとなるのは、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」行為に限られます。これは、その事業者ないしは事業者の連合体が「市場支配力」を行使したとされるときに認定されます。「市場支配力」は、最低でも市場シェアが20%以上である「有力な事業者」について場合に問題となります。そのため中小企業であれば、通常はこうした私的独占や不当な取引制限の規定に違反するリスクはありません。


一方で「不公正な取引方法」による規制は、必ずしもこのような「市場支配力」を要件としないため、「優越的地位の乱用」や「再販売価格維持」などの政令で指定された行為を行った場合には、「有力な事業者」でなくとも、独占禁止法に違反するおそれがあります。また事業者団体による規制についても、中小企業の地域的な事業者団体による公共入札での共同行為が公正取引委員会による排除措置命令の対処となる事例など、大企業でなくとも違反してしまうことがあります。


なお独占禁止法に対する特別法として、下請事業者との下請取引に関する「下請法」および不公正な取引方法の「欺瞞的顧客勧誘」に関する「景品表示法」があります。


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私的独占


独占禁止法3条事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

私的独占行為とは、事業者が一定の取引分野の市場を支配しようとする行為です。これには「排除型私的独占」と「支配型私的独占」があります。


排除型私的独占


排除型私的独占」とは、販売管理費などの変動費をも回収することが困難な低価格販売などを行い、競争相手を市場から不当に排除したり、新規参入者を不当に妨害して市場を独占しようとする行為です。


排除型私的独占が問題となった先例として、低運賃で利用ができるLLCが乗り入れた航空路線について、航空券の値下げや便数の増加などにより既存の大手航空会社が対抗したことが、排除型私的独占に該当する可能性があるとして、公正取引委員会により警告が発せられた事例(公取委警告平成14.9.30)があります。このような不当廉価販売のほか、新規参入を阻止する目的で、自ら使用する予定のない商標を出願し、それらの使用をあらかじめ妨害した事例(有線ブロードネットワークス事件)や、事業者団体で製品の製造に必須な特許の管理を行い、既存事業者以外へのライセンスを拒否した事例(パチンコ製造機事件)のように、知的財産権を不当に行使した事例においても、公正取引委員会から勧告審決が発せられています。


支配型私的独占


支配型私的独占」とは、競争相手の株式を取得するなどの手法により、他の事業者の事業活動に制約を与え、市場を支配しようとする行為です。


支配型私的独占が問題となった先例として、およそ50%の市場シェアを有していた製造業者が、競争相手である事業者への役員の派遣その他の方法により、実質的には市場の7割を支配した上で、新規参入を阻止する目的で取引拒絶などを行ったことに対し、公正取引委員会から勧告審決が発せられた事例(東洋製罐事件)があります。


不当な取引制限


独占禁止法3条事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

不当な取引制限とは、事業者が共同でその事業活動を制約することで、不当に高価格を維持することを指し、「カルテル」と「入札談合」があります。


カルテル


カルテル」とは、事業者が本来は自らの経営合理性に基づいて自主的に決定するべき価格や生産量などについて、他の事業者と共同で決定し、それによって高価格を維持することを内容とします。「価格協調」により低価格での購入を不可能にすることで、消費者が高価格での購入を強いられることは、消費者にとって不利益となります。また「生産量調整」により供給量を減らすことで高価格を維持することは、本来ならばより低価格で大量に供給された製品が市場に出回らなくなり、国民経済上の損失となります。ただし、このような価格協調や生産量調整は、市場シェアの高い事業者間で実施しなければ価格維持効果を生じないため、カルテル規制に該当する事業者は、原則として市場支配力を有する有力な事業者に限られます。


入札談合


入札談合」とは、公共工事や公共調達などの国や地方公共団体の入札に当たって、あらかじめ入札に参加する事業者間において受注者や入札価格を決定してしまうことを内容とします。なお独占禁止法とは別に、公共団体の職員が入札談合を主導するいわゆる「官製談合」の防止のため、入札談合等関与行為防止法が制定されています。同法により、行政機関の職員に対しても、入札談合関与行為が禁止されています。


カルテルや入札談合を認定するときには、多くの場合に、事業者が共同してそれらの行為を行ったかどうかが争点となります。この「意思の連絡」の立証に関して、黙示による合意であるとしても、事業者間で価格についての情報交換をしていた事実があるなど、状況証拠からカルテルを認定できれば足りるとする事例(東芝ケミカル価格カルテル事件)があります。


不公正な取引方法



独占禁止法19条事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない

不公正な取引方法とは、自由競争を確保するという観点から、こうした自由競争を侵害する恐れ(公正競争阻害性)がある行為を規制するものです。不公正な取引方法には、業界や業態を指定しない「一般指定」と特定の業界のみに適用される「特殊指定」があります。


 「一般指定」として禁止されている不公正な取引方法は、以下の16の行為です。


共同の取引拒絶

正当な理由がないのに、競争者と共同して、取引を拒絶すること

例:携帯電話の着うたを提供する既存事業者がJVに音楽原盤の著作権を移管し、新規参入を阻止することを目的として、他社との取引を拒絶する


その他の取引拒絶

不当に、特定の事業者との取引の内容を制限すること

例:安全性の確保などの正当な理由がないのに、製品を安売りをする販売店に対して、最新機種の提供を停止する


差別対価

不当に、地域や事業者によって差別的な対価を設定すること

例:競争者と取引をしている事業者に対して、リベートの支払いを行わない


取引条件等の差別的取扱い

不当に、特定の事業者に差別的な取引条件を課すこと

例:安全性の確保などの正当な理由がないのに、指定する販売方法を行う事業者に対してのみ、送料を自己負担する


事業者団体による差別的取り扱い

事業者団体から特定の事業者を排斥したり、内部の特定の事業者に対して差別的な取り扱いをし、その事業活動を困難にすること

例:事業者団体で必須特許の集中管理を行い、新規参入を阻止することを目的として、既存事業者以外への特許のライセンスを拒否する


不当廉売

正当な理由がないのに、コストを下回る低価格で販売し、競争相手の事業活動を困難にすること

例:競争相手がいる地域において、販売管理費などの変動費をも下回る低価格で製品を廉価販売し、新規参入を阻止する


不当高価購入

不当に高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にする恐れがあること

例:正当な理由なく、原材料を高価で買い占め、競争者の事業の継続を困難にする


欺瞞的顧客勧誘

顧客に優良誤認や有利誤認を生じさせ、不当に取引を誘引すること

例:「業界トップクラス」など根拠の乏しい宣伝により営業活動を行い、競争者の顧客を自社との取引に持ち込む


不当な利益による顧客勧誘

不当な利益をもって、顧客を取引に誘引すること

例:教科書会社が、検定中の教科書を使用する教員に対して図書カードなどの利益を供与し、取引に勧誘する


抱き合わせ販売

顧客に対し、不当に製品や他の事業者との取引を抱き合わせること

例:人気のゲームソフトを卸売りするにあたり、売れ残ったゲームソフトを同時に購入することを抱き合わせ販売により強制する


排他的条件付き取引

競争者と取引しないことを条件として取引すること

例:市場における有力な事業者が、販売店に対し、競争者との取引をしないことを条件として製品を供給する


再販売価格の拘束

相手方に対し、販売価格を維持する目的で、その価格決定を拘束すること

例:製品の価格を維持する目的で、安売りをする販売店に対し、リベートの支払いを行わない


拘束条件付き取引

相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付けて取引をすること

例:企業秘密の保護など正当な理由なく、競合製品の製品開発を行わないことを条件として、業務委託を行う


優越的地位の濫用

取引上の地位の優越に乗じて、購入・利用強制、不当な経済上の利益提供の強制、不利益な取引条件の強制、役員の派遣の強制などをすること

例:下請先に対して、新規事業に対する協賛金の提供を強制する


競争者に対する取引妨害

競争者の取引を不当に妨害すること

例:市場における有力な事業者が、自社製品の購入比率に応じてリベートの支払いを行うなどして、競争者の取引の機会を減少させる


競争者に対する内部干渉

株主権の行使その他の方法を問わず、競争者に不利益な行為を強いること

例:競争者の株式を取得し、競合事業からの撤退を経営陣に強要する


これに対し「特殊指定」としては、大規模小売業、物流業、新聞業に対して、特定の行為が不公正な取引方法として禁止されています。


不公正な取引方法」という枠組みによる規制は、諸外国の競争法制と比較して、日本の独占禁止法の特色ともなっています。



不公正な取引方法と市場支配力


不当な取引制限および私的独占として規制する上では、条文上「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とあるように、事業者が「市場支配力」を行使したと認定できることが前提となります。そのため公正取引委員会が違反事業者に対して措置命令等をするにあたり、市場シェアなどに対する市場分析が必要となります。


しかし「不公正な取引方法」においてはこのような要件はないため、公正取引委員会は、市場分析を経ることなく違法を認定することが可能です。言葉を換えれば、必ずしも「市場における有力な事業者」でなくとも、不公正な取引方法に該当する違反行為をしてしまうリスクがあるため、一般指定に抵触する可能性がある行為を行うに当たっては、その経営合理性についてあらかじめ慎重に検討することが必要です。安全性の確保や、権利処理の簡素化など、経営合理性が認められる場合には、「正当な理由」があるものとして、不公正な取引方法に該当しないこととされているためです。


独占的状態


独占禁止法8条の4独占的状態があるときは、公正取引委員会は(中略)競争を回復させるために必要な措置を命ずることができる

独占的状態」とは、市場が独占企業または少数の寡占企業により支配されることにより、自由競争が阻害され、新規参入や新規開発が抑圧されるとともに、高価格が維持されることにより、独占企業ないしは寡占企業が不当に多くの利潤を得ている状態を指します。


自由競争回復措置命令


公正取引委員会は、このような独占的状態が生じたときは、事業の一部の譲渡その他の「自由競争回復措置命令」を発することができます。私的独占、不当な取引制限その他の規制が行為規制であるのに対し、独占的状態に対しては、このような違反行為を前提とせず、市場の独占的状態を理由として、ただちにこのような措置命令ができる点に特色があります。ただし立法以来、本規定が公正取引委員会により発動された先例はありません。


企業結合の規制


独占禁止法10条会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない。

企業合併や株式の保有その他の方法により、複数の企業が結合することによって、市場の寡占状態が生じ、自由競争が侵害されることをあらかじめ予防するため、特定の場合に事業者は、公正取引委員会に対する事前の届出を行わなければなりません。具体的には、合併企業(もしくは企業グループ)の国内売上高が200億円以上であり、被合併企業(もしくは企業グループ)の国内売上高が50億円以上であって、かつ政令で定める場合に、届出義務の対象となります。


企業結合規制に違反する行為があった場合には、公正取引委員会は、事業者に対して、株式の処分や事業の一部の譲渡などの必要な措置を命ずることができます。実務的には、届出に先立って公正取引委員会との行政相談が行われ、その行政相談において企業結合規制に違反しないよう調整がされる場合がほとんどです。


事業者団体の規制


独占禁止法8条事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。

独占禁止法は、私的独占、不当な取引制限および不公正な取引方法に対する規制を行うとともに、事業者団体がそれらに違反するような行為をすることを、重ねて8条により禁止しています。8条1号は私的独占及び不当な取引制限行為の禁止、8条2号は私的独占及び不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際取引の禁止、8条3号は新規参入の制限の禁止、8条4号は構成事業者に対する不当な事業活動の拘束の禁止、8条5号は不公正な取引方法を強いることの禁止を、それぞれ事業者団体に対して課しています。


ここで「事業者団体」とは、事業者を構成員とする社団法人や財団法人をはじめとして、組合その他の契約による結合体を含むため、○○協会、○○協議会、○○連合会、○○組合のような団体を広く含みます。


事業者団体に関する先例として、事業者団体が最低販売価格を決定したことが勧告の対象となった事例(化石油ガス用メーター製造業者等団体事件)や、製品価格の値上げのため、安値品の買い上げを事業者団体が行ったことが勧告の対象となった事例(浄化槽用ブロワ製造業者等団体事件)があります。


独占禁止法に違反した場合



独占禁止法に違反した場合、公正取引委員会または司法機関により排除措置命令、課徴金納付命令および各種刑事罰の対象となります。また措置命令に伴い事案の概要や企業名等が公表されるため、企業のブランドイメージや社会的信用が毀損してしまう恐れがあります。


排除措置命令


独占禁止法に違反した場合には、公正取引委員会による調査を経て、意見聴取手続きが行われ、違反行為を是正するため「排除措置命令」が発せられます。排除措置命令を発するに足りる証拠が調査で得られなかった場合には、違反行為の中止を求める「警告」や「注意」がなされることもあります。


課徴金


このような排除措置命令その他の措置に加えて、カルテルや優越的地位の濫用その他の特定の行為に対しては、違反行為による売上高に応じた「課徴金」の納付命令が出されます。これまでの課徴金の最高額は、1企業に対するものでは131億円となっています。


刑事罰


さらに一定の悪質な行為については、公正取引委員会から刑事告発がなされ、違反者個人には5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科され、さらに法人には5億円以下の罰金が刑事罰として科せられることがあります。


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