契約書の書き方・テンプレート
相手方と約束を取り交わしたときに、その約束を守ってもらう必要がある場合(とりわけ金銭の支払いを必要とするとき。つまりほとんどの事業上の取引の場合)、お互いが有する権利と負担する義務を明らかにするために、契約書を締結することが大切です。
契約書とは
契約書とは、このようにお互いの権利義務を記載した書面であるといえます。たとえば売買契約であれば、売買の目的物、売買代金、売主が負担する契約不適合責任、納品時期および納品場所などを記載します。他に、より詳細な取り決めが必要となった場合は、支払方法や手数料の負担、引き渡しの際の運賃、保険料の負担、納品検査の方法、売主による不良品対応の内容などを記載しておきます。
民法には「契約自由の原則」があるため、当事者は基本的にどのような契約でも自由に取り交わすことができます。たとえば「一年間の禁煙に成功したら自動車を買ってあげよう」というような契約も可能です。ただし契約をした経緯や状況により、当事者に真剣に契約を締結する意思がないとみなされる場合は、いわゆる自然債務として守るかどうかが本人の意思に委ねられることになります。また人身売買や麻薬取引など、公序良俗に反する契約は、無効とされます。
契約書を作る目的
契約書を作る目的は、その取引の経緯や内容により様々といえますが、共通している点としては、①事後のトラブルを予防するため、という目的と②約束を守ってもらうためという二つがあげられます。
口頭の約束は「口約束」というように守ってもらえる保証がなく、また会社間の取引のように営業、実務担当者、直属の上司、法務担当者、経営者と複数の窓口がある場合、それぞれの窓口で決めた内容に食い違いがあり、それが基で思わぬトラブルが起きてしまうようなこともあります。契約書が取り交わされることにより、その取引の内容は契約書の内容で一本化されます。
また契約書として契約内容を書面にすることで、もし相手方が義務を任意に行わない場合、裁判所や弁護士による督促が行いやすく、契約書という物的証拠があることにより、相手方がこれを争う余地をあらかじめ消滅させてしまうことができます。契約書は、誰でも公証人による認証を受けることで公正証書にすることができますが、公正証書の場合はただちに強制執行まで進むこともできます。
契約書の記載事項
契約書の記載事項として、まず必ずどの契約書でも必要となる事項として、以下の事項があります。
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当事者の住所・氏名 誰と誰が契約しているのか、明らかにするために必要です。
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契約締結日 いつ契約をしたのか、明らかにします。
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対価 たとえば売買代金と商品、利用料金とサービスのように、対価関係にあるものを明示します。
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契約期間 スポットの取引でない場合は、いつからいつまでの契約なのかを記載します。
これらの事項が記載してあれば、たいていの場合において、その契約の基本的な性格(売買か、委任か、貸借かなど)が明らかとなります。契約書に記載していない事項については、民法の補充規定(当事者が決めなかった事項について法律が定めたデファクトスタンダード)により自動的に定まることになるため、必ずしも契約書に取引の全部を記載する必要はありません。ただしデファクトスタンダードからの修正が必要な場合には、これらは明示的に契約書に記載しておく必要があります。これには、たとえば以下のような事項があげられます。
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保証内容 保証期間や返品対応の内容、保証事項などを定め、その範囲を明らかにします。
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責任の範囲 取引に関して損害が発生した場合に、どこまで補償するかを記載します。
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解除 どのような事態が起きたときに、どのように契約を解除できるかを定めます。
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対価の提供方法 納品場所、納品時期、支払方法、支払タームなどを定めます。
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危険負担 対価がなんらかの事故で破損した場合の処理を定めます。
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反社会的勢力の排除 相手方が反社会的勢力の場合に、取引から離脱できるようにします。
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仲裁の定め 海外取引の場合、多くの場合、仲裁の合意をします。
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裁判管轄 紛争となった場合にどこで裁判をするかを定めます。
契約書の構成
契約書の構成に決まりはありませんが、どの契約書を見ても一目で必要な事項を確認することができるよう、ほとんどの契約書は以下のような構成を取ります。
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頭書 誰と誰がどのような目的でどのような契約を結んだのか、簡単に宣言します。
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実体条項 取引の内容に着目した規定を配置します。
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一般条項 裁判管轄や損害賠償責任など、契約の法的側面に特化した規定を配置します。
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記名押印日 記名押印した日付を記載します。
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記名押印欄 当事者の住所・氏名と代表者の押印または自署を行います。
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別紙 価格表や対象地域の一覧表などを添付します。
各種契約書テンプレート
当事務所では、様々な契約書・規約の作成を承っております。以下に、実務上重要な契約書をいつくかご紹介します。またご参考として簡易テンプレートを無料でダウンロードいただくことも可能です。テンプレートには最小限の事項を記載しておりますので、ご使用の際は、ご自身の責任において追記・修正していただくか、当事務所又は専門家にご相談下さい。
業務委託契約書
業務委託契約とは、「業務」の全部または一部を外部に「委託」することを内容とする契約です。売買契約や秘密保持契約と並んで、ビジネスシーンにおいて活用されることの多い契約類型であると言えます。
業務委託契約は、その委託する「業務」の内容によって「役務提供型業務委託契約」と「製品給付型業務委託契約」に区分することができます。さらに「委託」の性質により、民法上は「委任契約」「準委任契約」「請負契約」および「寄託契約」に区分することができます。別名で「アウトソーシング」と呼称されることもあります。
当行政書士事務所は、こうした広範な請負業務・委任業務の法的分類に応じ、御社のお取引に即した業務委託契約書を作成代行させていただきます。
秘密保持契約書
ノウハウや知識、個人情報、経営情報、営業情報、技術情報など、「秘密」はビジネスのキーとなっています。こうした秘密を取引先に開示しなければならない場合、秘密保持契約を取り交わすことで、開示した「秘密」を「秘密」のままにすることができます。
こうした秘密保持契約の役割としては、
①秘密の外部流出の防止と
②開示した情報の目的外使用の防止
が挙げられます。
①秘密の外部流出の防止について 委託製造で自社技術を使用した製品を納品する場合、特許をはじめとする知的財産権を許諾する場合、コンサルティング業務にあたり情報それ自体を商品として提供する場合、提供した情報の外部への流出を防がなければなりません。 不定型のノウハウや技術情報のように、知的財産権法上の直接の保護を受けることができないような情報は、秘密保持契約において「秘密情報」と位置付けることで、不正競争防止法上の「営業秘密」としての保護を期待することができます。
②開示した情報の目的外使用の防止について 特定の事業の運営改善のためのコンサルティング内容を、クライアントが他社に対するコンサルティング業務で利用する場合のように、開示した情報を予期せぬ方法で利用されて損害を受ける場合があります。 秘密保持契約において目的外使用を制限することにより、こうしたリスクを予防し、有事に対抗措置をとることを可能にします。
このような事態をあらかじめ防止し、有事においては実効的な対抗措置を取ることができるよう、当行政書士事務所がお取引に即した秘密保持契約書を作成します。
売買基本契約書
売買基本契約書とは、売主が買主に対して継続的に物品を売り渡す場合に、発注書や発注請書などにより定まる個別契約とは別に、その取引の全体について取り決めるために締結される基本契約書です。
個々の取引での注文の内容については個別契約に委ね、売主の契約不適合責任や保証内容、不良品対応の内容、代金以外の費用の負担、支払いターム、物品に含まれる知的財産権の取り扱いなどについて合意しておきます。部品や原材料の供給のように、売主による供給の継続性が重要である場合には、契約期間にわたって売主が買主の注文に応ずることができるよう十分な在庫を確保しておくべき旨を定めておく場合もあります。また売主が物品を製造して買主に売り渡すこととなっている場合には、業務委託契約の性質を兼ねることになります。
当行政書士事務所は、こうした広範な売買基本契約の法的分類に応じ、御社のお取引に即した売買基本契約書を作成代行させていただきます。