英文契約書の基本構成と書き方

更新日:11月8日


 英文契約書の基本構成 

  1. 英文契約書とは

  2.  法慣習の違い

  3.  英文契約書の構成

 英文契約書の書き方  

  1. 英文契約書の各条項の検討

  2.  通知の方法

  3.  損害賠償責任

  4.  不可抗力免責

  5.  解釈言語

  6.  独立当事者条項

  7.  完全合意条項

  8.  準拠法・裁判管轄

  9.  仲裁合意

本記事は、メル行政書士事務所が執筆・運営しています。


英文契約書とは


英文契約書とは、その名の通り英文で記載された契約書を指します。ただし、準拠法や裁判管轄などの取り決めにより、様々なパターンが考えられます。海外法が準拠法とされ海外の裁判所が管轄裁判所とされる契約書の他にも、日本法を準拠法とし、日本に所在する裁判所を管轄裁判所として合意した英文契約書であっても、英文契約書であることには変わりありません。


一方で、英文契約書と邦文契約書の二通を作成し、邦文契約書を正式な契約書として位置付け、英文契約書を二次的な契約書として位置付ける場合には、その英文契約書は訳文としての役割を担っているにすぎないと言えます。必ずしも英語圏の相手方との契約でなくとも、国際取引における標準語として、英語が採用されることが多いでしょう。


契約書の準拠法

ライセンス契約におけるライセンサーなど、交渉力において海外の相手方に優位する場合には、不測のリスクを予防するため、英文契約書であっても、日本法を準拠法とすることが望ましいことが多いと思われます。さらに上述のように、邦文契約書と英文契約書を作成し、邦文契約書を正式な契約書とする方法もあります。


準拠法を海外法とする場合には、その準拠法において当事者の意図しない法効果が発生することを予防するため、契約書から発生する法効果を限定する趣旨で、独立当事者条項や完全合意条項など、英文契約書に特有の条項が置かれます。



法慣習の違い


英文契約書の締結に当たっては、法制度などのハード面のみならず、海外の当事者との法慣習の違いのようなソフト面についても意識しておく必要があります。


国内においては、契約書には必要最低限の権利義務について定め、その他の事項については当事者間の協議に委ねるという傾向が根強いです。また交渉の過程においても、交渉の長期化を防止し、当事者間の信頼関係の構築を優先する趣旨から、一方当事者に有利な条件の提示は避けられる傾向もあります。しかし海外の当事者においては、契約書に当事者間の全ての合意事項を記載するとともに、交渉による修正を前提として、一方当事者に有利な条件を提示してくることも考えられます。


口頭証拠排除法則(Parol Evidence Rule)


このような法慣習の違いは、それぞれの文化的な側面も寄与していると考えられますが、とりわけイギリス・アメリカ・カナダをはじめとする英米法圏においては、詐欺防止法との関連において、書面主義の傾向が強くなっています。詐欺防止法とは、不動産取引や一定額以上の売買契約の成立に書面による合意を求めるもので、口頭による合意のみでは、裁判所により契約の執行可能性を否定されてしまうおそれがあります。アメリカにおいては、連邦政府によるモデル法案である統一商事法典UCC §2-201(1)の定めを受けて、各州の州法において規律が定められています。


そのため海外の当事者との交渉においては、このような書面主義的な傾向を踏まえ、必要な場合には、交渉経緯を覚書や議事録として書面にし、暫定的な合意文書として相手方の署名をもらっていおくというようなことも考えられます。このような暫定的な合意文書は、LOI(Letter of Intent)MOU(Memorundom of Understanding)と呼ばれます。本契約において完全合意条項を置いた場合にはこのような文書は法的効力を失効しますが、交渉が長期化した場合に、本契約に向けた建設的な協議を担保することができます。


英文契約書の構成


英文契約書は、フォーマルな形式の契約書である場合、一般に以下のような構成をとります。売買契約のような定型的契約においては、このような構成をとらない簡易な形式の契約書(Letter形式など)が取られることもありますが、法的な拘束力としては変わりはありません。

  1. 契約書の表題

  2. 頭書

  3. 前文

  4. 本文

  5. 後文

  6. 当事者の署名

表題・頭書


表題としては、単に「Agreement」とされることもありますが、一般に「Sales Agreement」や「Non-Disclosure Agreement」など契約書の内容を表すタイトルが入ります。頭書(premises)部分には、当事者の住所・名称及び設立に係る準拠法などが記入されます。相手方がアメリカやカナダなど連邦制国家に所在する当事者である場合、設立に係る準拠法が州によって異なるため、このような記載が必要となります。邦文契約書においては当事者の住所・名称は末尾の署名欄に付記する場合が多いですが、英文契約書においては、このように冒頭に配置されます。


This Agreement is made as of_______日付_______, between:

_____当事者_____, a corporation duly organized and existing by virtue of the laws of _____設立に係る準拠法_____ with its principal office at_____本店所在地_____, and ____当事者_____, a corporation duly organized and existing by virtue of the laws of _____設立に係る準拠法_____ with its principal office at _____本店所在地_____,


前文・約因(RECITAL)


頭書に続いて、前文として、契約成立に至った経緯が記載されます。原則として法的拘束力を有しない文章ではありますが、その契約書の準拠法によっては、当事者間に対価的な関係がある双務契約でない限り執行力が認められない可能性があるため、そのようなリスクを予防する趣旨で約因(Consideration)として前文が記載されます。なお、売買契約のように対価的関係が明らかな契約の場合、簡易な契約書やモダン形式の英文契約書においては、前文が省略されることもあります。


WITNESSETH:

WHEREAS, _____当事者_____desires to sell to _____当事者_____ certain products hereinafter set forth; and

WHEREAS, _____当事者_____ is willing to purchase from _____当事者_____ such products.

NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual agreements contained herein, the parties hereto agree as follows:


本文

本文として、契約書の契約条項が記載されます。契約条項は、その内容によって、以下の三種類に区分できます。

  1. 定義条項(Definitions)

  2. 実質条項(Agreements)

  3. 一般条項(General Provisions)

邦文契約書においては、契約書中に最初に用語が登場したタイミングで(以下「○○」とする)等として逐次に用語を定義することが多いですが、英文契約書においては、定義条項として契約書中の用語の定義を最初に一括して定めることが好まれます。実質条項において、その取引の内容をなす合意事項を記載します。さらに一般条項として、以下のような事項が合意されます。

  1. 通知の方法

  2. 秘密の保持

  3. 権利義務の譲渡禁止

  4. 損害賠償責任

  5. 不可抗力免責

  6. 契約期間

  7. 解除・解約

  8. 期限の利益の喪失

  9. 解釈言語

  10. 独立当事者条項

  11. 完全合意条項

  12. 準拠法・裁判管轄

  13. 仲裁合意

英文契約の各条項の検討



本文の記載事項のうち、英文契約において特に注意するべき一般条項は、通知の方法や不可抗力免責など、国際取引上のリスクにかかわる条項です。なお独立当事者条項や完全合意条項は、英文契約に特有の一般条項と言えます。以下、英文契約書においてとりわけ取り扱いに検討を要すべき条項について、それぞれ解説します。


通知の方法


通知の方法は、契約に係る取引に置いて当事者間で何らかの意思表示や通知を行う場合に、どのような方法によるべきかについて定めます。国際取引においては、郵送時の事故や遅延などが問題となりやすいため、「発送して〇日後に相手方に到着したものとみなす」などとして、通知義務の内容を明確にする場合もあります。


 条文例:通知条項 


Article___(Notice)

All notices required or permitted hereunder shall be given in writing by_____通知の方法_____. Any such notice shall be deemed given, _____日数_____ days after deposit.


損害賠償責任


英文契約書においては、損害賠償責任の範囲について、邦文契約とは異なる特有の注意が必要となります。準拠法や裁判管轄によっては、損害賠償の内容として、懲罰的損害賠償(Punitive damages)が認められるリスクがあるためです。


懲罰的損害賠償とは、損害賠償の内容として、被害者に生じた損害の填補のほか、さらに加害者に対する制裁の趣旨で、損害賠償が命じられる制度です。なお日本においては、このような損害賠償請求については、民事裁判において実質的に刑事責任を問うこととなり公序良俗に違反するとして、国内における執行力が否定されています。


ただし海外に所在する資産については、その現地の裁判所の判断により懲罰的損害賠償が認められ、差押えその他の執行がなされるリスクがあります。そのため契約においてこのような趣旨の損害賠償責任については負わないこととすることも検討する必要があります。


 条文例:損害賠償責任の制限 


Article___(Limitation of Liability)

Neither Party shall be liable for any indirect, punitive or special damages.


不可抗力免責(Force Majeure)


不可抗力免責(Force Majeure)とは、自然災害やテロなど当事者にとって予見不可能かつ回避不可能な異常事態が発生した場合、そのような不可抗力によって生じた契約の不履行については、当事者は相手方に責任を負わないとするものです。


国際取引の場合、仕入れや納品に当たって税関において予期せぬ遅延やトラブルが発生してしまうリスクがあります。そのため当事者においてこのような通関上のリスクを負担したくない場合には、このような通関での遅延については、不可抗力として定めておくということも考えられます。


 条文例:不可抗力免責 


Article___(Force Majeure)

Neither party shall be liable to the other party for any delay or failure in the performance of its obligations in the event that such delay or failure arises from any cause beyond the reasonable control of the party affected.


解釈言語

 

英文契約においては、英文契約書のほか、当事者が所在する国の言語による契約書があわせて作成される場合があります。当事者がそのいずれにも記名押印する場合には、いずれの言語による契約書が優先する契約書であるのかを決めておく必要があります。


必ずしも準拠法や裁判管轄と同一である必要はありませんが、このような事項については、当事者の交渉力により決定されることが多いと思われます。とりわけ相手方の当事者が英語圏以外である場合には、不測のリスクを予防するため、日本語の契約書か、もしくは英文の契約書を正式な契約書とするよう努める必要があります。


 条文例:英文による契約書の優先 


Article___

This Agreement is made in English and _____言語_____. If there is any conflict or inconsistency between these counterparts, the English one shall prevail.


独立当事者条項(Independent Contractor)


業務委託契約や販売店契約などの英文契約を結ぶ場合、準拠法によっては、現地の法制により、一方当事者が他方当事者の代理人であるとみなされてしまうリスクがあります。このような懸念をなくすため、独立当事者条項が置かれることがあります。


 条文例:独立当事者条項 


Article___(Independent Contractor)

Either Party hereto is an independent contractor and, neither party does not hold itself out as an agent of any other party hereto.

This Agreement shall not create or imply an agency relationship among the parties.


完全合意条項(Entire Agreement)


英米法圏の当事者である場合、契約交渉における口頭の約束事や交渉途中でのLOI(Letter of Intent)MOU(Memorandum of Understanding)などの暫定的な合意文書や議事録が、事後に契約の解釈において考慮されることによって生じ得る不測のリスクを嫌い、一般条項として完全合意条項(Entire Agreement)を置くことを求めてくることがあります。


完全合意条項とは、その契約におけるすべての合意事項はその契約書に記載された文言により解釈されるべきであり、その契約書以外のいかなる合意も法的効力を有しないとする条項です。日本においては、誠実協議条項などにより、当事者間に合意のない事項については、その後の当事者の協議に委ねるとする法慣習が根強いため、このような完全合意条項を提示された場合には、契約書に記載のない合意事項がないかどうか慎重に検討する必要があります。


 条文例:完全合意条項 


Article___(Entire Agreement)

This Agreement covers the entire understanding between the Parties with respect to the subject matter hereof and supersedes all prioor agreement between the Parties.


準拠法・裁判管轄


準拠法とは、その契約が解釈されることとなる法制度をどの国又は州の法制度とするかについての合意です。例えば日本法を準拠法とした場合、売買契約については、日本の民法や商法の売買に関する規定が適用されます。同様に、カリフォルニア州法やニューヨーク州法を準拠法とすることもできます。


裁判管轄とは、その契約に関する争訟をどの国又は州の裁判所に提起できるかについての合意です。当事者の一方の所在地を専属的合意管轄として、その他の裁判所での裁判を否定する方法の他に、応訴の負担を負う被告側が、その所在地の裁判所で応訴できることが公平であると考える場合、被告の所在地の裁判所に裁判管轄を認める方法もあります。


なお裁判管轄については、当事者間の合意の他に、各国の国際私法や司法制度によっても規律されるため、契約書において裁判管轄を合意したとしても、場合によっては異なる裁判所により裁判がされるリスクもあります。また契約上の債務不履行による損害賠償について、債務不履行責任としてではなく、不法行為として責任を追及する場合、損害が発生した場所である原告の所在地で訴訟を提起することが可能となるおそれも否定はできません。


仲裁合意


上記のように裁判管轄の合意には限界があることから、そもそも裁判によることを排除し、仲裁により紛争を解決することとすることも考えられます。この場合、例えば中国に所在する企業との仲裁地をシンガポールとするなど、第三国の仲裁機関を指定することも可能となります。また裁判とは異なり、実体法にとらわれない柔軟で比較的迅速な解決を見込むこともできます。


ただし仲裁手続きによる場合、仲裁費用が高額になる可能性もあるため、仲裁の申し立てを受けたとき、あるいは相手方に対して仲裁を申し立ててるとき、その契約に係る取引が仲裁費用に見合うものであるかどうかは検討しておく必要があります。例えば日本商事仲裁協会の商事仲裁手続きによる場合、仲裁人が三人であるときは、予納金として当事者一人当たり各300万円ずつ必要となり、さらに仲裁人の時間報酬5万円その他の費用が必要となります。

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