業務委託契約について



  1. 業務委託契約とは

  2. 委任契約と請負契約

  3. 業務委託契約の雛型

  4. 業務委託契約のメリット

  5. 業務委託契約のリスク

  6. 業務委託契約についてのまとめ

  7. メル行政書士事務所にできること


1.業務委託契約とは


 業務委託契約とは、「業務」の全部または一部を外部に「委託」することを内容とする契約です。売買契約や秘密保持契約と並んで、ビジネスシーンにおいて活用されることの多い契約類型であると言えます。業務委託契約は、その委託する「業務」の内容によって「役務提供型業務委託契約」と「製品給付型業務委託契約」に区分することができます。さらに「委託」の性質により、民法上は「委任契約」「準委任契約」「請負契約」および「寄託契約」に区分することができます。別名で「アウトソーシング」と呼称されることもあります。


業務委託契約の分類


業務の内容 →  役務提供型/製品給付型

契約の性質 → 委任/準委任/請負/寄託


 業務委託契約がこれらの分類のうちいずれに該当するかにより、民法および商法において、その契約に適用される条文が変わり、その契約がどのような性格の契約であるかが変わります。民法は「委任」「請負」など13の契約を典型契約として定めており、どの典型契約に該当するかによって、費用負担や瑕疵担保責任などについて、委託者と受託者の権利義務が異なるためです。


 また商法においても、特定の業種や業態については、「場屋経営者」のする「寄託」についての特則などが定められています。さらに「請負」の中でも、「運送」や「建設」に該当する契約は、道路運送法や建設業法等の各種の業法による規律の対象ともなることがあります。このような場合、約款の所轄官庁への届出義務などが発生します。


 このように業務委託契約がどのような内容と性質の契約であるかという点は、その契約がどのような法律や政省令により規律を受けるのかの基準となるため、そこから発生するリスクを踏まえて条文を検討する必要があります。また印紙税法上の課税文書であるかどうかも、その契約の性質により判断されます。


2.委任契約と請負契約


 業務委託契約の種類として、業務の内容と契約の性質により、以下のように区分できます。


委任タイプ

委任+役務提供型

 例:訴訟代理人契約、経営委任契約

準委任+役務提供型

 例:理美容契約、コンサルティング契約

寄託+役務提供型

 例:倉庫契約、銀行預金契約

  1. 受託者の義務:受託者は、成果物の完成の義務を負わない一方、善良なる管理者の注意をもって義務を遂行する義務を負います。

  2. 再委託:委託者と受託者の信頼関係により成立する契約であるため、受託者は委託者の承諾を得たときかやむを得ない事由があるときを除いて義務を再委託できず、自ら委任事務を処理しなければなりません。

  3. 費用負担:委託者は、受託者が支出した費用を償還しなければならず、受託者が過失なく負った債務や損害賠償義務を、委託者が負担する必要があります。

  4. 契約の解除:委託者と受託者は、損害を賠償して、いつでも契約を解除することができます。

  5. 瑕疵担保:受託者は、債務不履行となる場合を除いて、瑕疵担保責任を負いません。

請負タイプ

請負+製品給付型

 例:製造委託契約、建設請負契約

請負+役務提供型

 例:システム保守契約、運送契約

  1. 受託者の義務:受託者は委託者の具体的な指揮命令を受けない一方、成果物を完成させる義務を負います。

  2. 再委託:受託者は、業務の遂行にあたって履行補助者を用いることはもちろん、委託者の承諾を要せずに再委託をすることもできます。

  3. 費用負担:受託者は自らの負担で業務を遂行しなければならず、費用を委託者に請求することはできませんが、成果物と引き換えに報酬を請求できます。

  4. 契約の解除:委託者は、成果物の完成前であれば、割合的報酬を支払うことでいつでも契約を解除できる一方、受託者は契約を解除できません。

  5. 瑕疵担保:委託者は、受託者に対し、瑕疵担保責任として、代金減額請求や不足物の引き渡しや代替物の給付などの追完請求権を有しています。


 業務委託契約が「委任」・「準委任」・「寄託」として構成できる場合には、受託者は委託者の業務を「代行する」という側面が強く、委託業務の責任や費用を委託者が負担することになりますが、業務状況の報告の徴求などを通して、委託者は受託者をコントロールすることができます。


 一方で業務委託契約が「請負」として構成できる場合には、受託者は委託者の業務を「納品する」という側面が強く、委託業務の責任や費用は受託者が負担する一方、委託者による受託者へのコントロールは、特約がなければすることができません。


3.業務委託契約の雛型


 業務委託契約書の雛型の一例は、下記のとおりです。業務委託契約書の締結に当たっては、必要に応じて当事務所などの専門家にご相談の上、雛形を修正してご使用ください。

 

業務委託契約書


 本契約は、株式会社X(以下「委託者」とする)と株式会社Y(以下「受託者」とする)との間における、〇〇に関する業務(以下「本業務」とする)の委託に関し、必要な事項を定める。


第1条(目的)

 委託者は、受託者に対し、本業務を委託し、受託者はこれを受託する。


第2条(注意義務)

 受託者は、善良なる管理者の注意をもって、本業務を遂行する。


第3条(報告義務)

 委託者は、受託者に対し、本業務の処理の状況について、いつでも報告を求めることができる。


第4条(秘密保持)

 受託者は、本業務に関連して知り得た委託者の営業上又は技術上の秘密を、委託者の事前の承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。


第5条(再委託)

 受託者は、委託者の事前の承諾を得たときは、再委託をすることができる。


第6条(対価の支払)

 委託者は、受託者に対し、〇年〇月〇日までに、本業務の対価として金〇〇円を支払う。


第7条(解除)

第1項

 委託者及び受託者は、相手方が本契約に違反した場合、相当の期間を定めて催告をし、その期間内に相手方が是正しないときは、本契約を解除することができる。

第2項

 委託者及び受託者は、相手方において、手形の不渡りがあったとき、差押えの申し立てを受けたとき、破産の申し立てを受けたとき、その他不信用な事実があったときは、直ちに本契約を解除することができる。


第8条(損害賠償)

 委託者及び受託者は、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければならない。


第9条(有効期間)

 本契約の有効期間は、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までとする。ただし、第4条及び第8条は、本契約終了後も効力を有する。


第10条(誠実協議)

 委託者及び受託者は、本契約に定めのない事項及び本契約に関する疑義については、相手方と誠実に協議して解決する。


第11条(管轄)

 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。


本契約締結の証として本書2通を作成し、委託者及び受託者は、記名押印の上、各自1通を保有する。


〇年〇月〇日

委託者:〇〇〇〇ー〇〇

株式会社X

代表取締役 〇〇 印


受託者:〇〇〇〇ー〇〇

株式会社Y

代表取締役 〇〇 印

 

4.業務委託契約のメリット


 業務委託ないしはアウトソーシングをすることによるメリットとして、以下のような点を挙げることができます。


コストの削減


 事業活動においては、必ずしも本業とは言えないような付随業務や人事総務経理などのバックオフィス業務に対しても、事業規模に応じた設備投資や人件費が必要となります。このような周辺業務は、本業におけるようなノウハウの蓄積や資本投下がなされるとは限らないため、全体として能率が低下する原因となります。


 また比較的小規模な企業であれば、バックオフィス業務のための人員を配置することが現実的でない場合もあります。こうした周辺業務を外部に委託することにより、設備投資や人件費を削減することができ、コストを抑えることができます。


コアコンピタンスへの集中投資


 業務委託によるコストの削減により、経営資源を中核業務に投資することができます。人件費や設備投資を中核業務に集中させることで、ノウハウの蓄積や能率の向上を見込むことができ、更なる競争優位性の確保に資することになります。


 電子部品やアパレルをはじめとする製造業においては、スマイルカーブ理論に基づき、競争優位の確保に継続的な資本投下を要する製造組立工程を外部に委託することにより、高い利益率を実現する経営手法が取られています。これによって製造組立工程への大規模な資本投下が不要となり、高付加価値を創出することができる上流の企画開発段階と下流の小売流通段階に注力することができます。


 国内において消費者の選好が成熟していく中で、製品やサービスに独自性やオリジナリティを打ち出すために、このようなコアコンピタンスの確立がより重要性を増しています。業務委託を活用することにより、M&Aや事業譲渡などドラスティックな手法による企業再編によらなくとも、コアコンピタンスへの経営資源の集中を実現することが可能となります。


品質の向上


 受託業務のための設備や人材、ノウハウを備えた専門業者に委託することにより、その業務の品質を向上させることが期待できます。


5.業務委託契約のリスク


 業務委託ないしはアウトソーシングをすることによるリスクとして、以下のような点を挙げることができます。


秘密情報の流出のリスク


 業務委託に当たって、製品の開発上のノウハウや営業上の顧客リストを受託者に開示しなければならない場合があります。こうした技術情報や営業情報は、必ずしも特許権などの知的財産権や不正競争防止法上の営業秘密として防衛できるとは限らないため、受託者から流出するリスクや受託者が目的外利用をするリスクがあります。


 またバックオフィス業務を委託する場合には、雇用管理情報などの従業員の個人情報を開示する必要があるため、こうした個人情報の管理上のリスクもあります。


 このような秘密情報の流出を防止するためには、適切な受託者を選定することはもちろんですが、受託者の情報管理を契約により担保することも、あわせて検討する必要があります。開示情報の中でも秘密情報を特定したり、秘密情報の複製を制限したり、秘密情報を受領できる関係者を特定することなどが有効です。


条文例:秘密情報の特定

第〇条 秘密保持

 受託者は、本業務に関連して知り得た以下の各号に該当する情報(以下「秘密情報」とする)を、委託者の事前の承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。

  1. 〇〇の精製に関する技術上のノウハウ

  2. 委託者の取引先に関する営業上の情報

  3. 委託者の従業員の雇用管理情報その他の個人情報

  4. 委託者が秘密として指定した情報

  5. その他上記の各号に関連する一切の情報


条文例:秘密情報の複製の制限

第〇条 秘密情報の複製

 受託者は、本業務の目的のため必要な範囲内に限り、秘密情報を複製することができる。この場合において、複製により生じた情報も秘密情報に該当するものとする。


債務不履行のリスク


 業務委託契約もまた外部との取引関係であるため、納期の遅れや品質の瑕疵などの受託者による債務不履行のリスクがあります。こうした危険を予防する上では、契約において品質保証条項について合意するほか、受託者に対し、責任者の特定などの品質保証体制の管理を義務付けることも検討する必要があります。


 また債務不履行が生じる恐れが生じた場合に、委託者がその差し止めをすることができることを契約に明記することによって、民事保全制度を活用できる可能性が高まります。


 さらに債務不履行に対する損害賠償責任の範囲や損害賠償額をあらかじめ定めておくことにより、委託者の予測可能性が向上するとともに、受託者に対して、不履行を抑止する効果を期待できます。


 ただし違約金などの損害賠償額の予定は、契約交渉において争点化しやすい条項であると言えます。そのため早期の合意を急ぐときには、損害賠償責任の範囲を明確にすることにより対応することが望ましい場合もあります。


条文例:品質の保証

第〇条 品質保証

 受託者は、本業務の成果物の品質に関して、以下の各号を保証する。

  1. 仕様書に定める性能、規格その他の要件に適合すること

  2. 本業務に関連する法律、政省令、条例その他の法令上の品質基準に適合すること

  3. 第三者の知的財産権を侵害していないこと

条文例:損害賠償責任の範囲の特定

第〇条 損害賠償

 委託者及び受託者は、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、その通常損害(合理的な範囲の弁護士費用を含む)及びその損害発生時において予見すべきであった特別損害を賠償しなければならない。


信用不安が生じるリスク


 委託者に信用上の不安がある場合には、対価の支払の不履行という形で、委託者の債務不履行が生じる可能性もあります。また受託者が、破産や会社更生その他の清算手続きや再生手続きを開始した場合には、業務委託契約が破産管財人等により解除されてしまう恐れがあります。


 このような信用リスクに備えるため、信用調査ができる場合にはそれによることができますが、業務委託契約においてそのような調査が常に可能であるとは限らないため、契約により備えておくことも検討しなければなりません。


 期限の利益喪失条項を契約書に挿入することにより、支払不能や不渡り、破産の申立てや差押えなど信用不安が明らかになったタイミングで、ただちに契約関係を清算することができるようにしておくことが有効です。


条文例:期限の利益の喪失

第〇条 期限の利益の喪失

 委託者及び受託者は、手形の不渡りがあったとき、差押えの申し立てを受けたとき、破産の申し立てを受けたとき、その他不信用な事実があったときは、相手方に対して負担する一切の債務について、期限の利益を失い、相手方に対し、直ちにその全部を弁済しなければならない。


受託者による押さえ込みのリスク


 販売代理店契約や特許実施権許諾契約などを締結した場合には、特定の地域や期間について、委託者が他の受託者に販売代理権や特許実施権を与えないことや委託者が自らこれらの権利を行使しない旨が合意されることがあります。


 受託者としては、競合を排して独占的に権利を実施できるため、メリットのある取り決めです。また委託者としても、自ら販路を開拓するノウハウや経営資源がない場合に、受託者の販路を活用してその権利を市場に出すことができるメリットがあります。


 ただし一方で、受託者がこれらの権利を誠実に行使しない場合に、本来その販売権や特許実施権から得ることができた収益を得られない恐れがあります。たとえば、ヨーロッパでの販売について独占的な販売代理権を与えたにもかかわらず、受託者が一向にヨーロッパでの具体的な宣伝活動や販売活動を行わないような場合が考えられます。


 このようなリスクを予防するために、業務委託にあたって独占的なライセンスを付与する場合には、受託者の業務状況の報告を書面で徴求できる権利を規定したり、契約の見直しができるよう、更新条項を付した上で契約期間を短期とする方法などが考えられます。


条文例:受託者の報告

第〇条 報告

 受託者は、委託者から求められたときは、遅滞なく、本製品の販売数量、種類、販売代金その他の本業務の状況について、書面で報告しなければならない。


条文例:契約の見直し

第〇条 有効期間

 本契約の有効期間は、契約締結時から1年間とする。ただし、期間の満了までに委託者と受託者で合意したときは、本契約を更新することができる。


6.業務委託契約についてのまとめ


 業務委託契約には、役務提供型と製品給付型があり、契約の性質としては、委任・準委任・寄託・請負に区分することができます。こうした業務委託契約を活用することにより、中核業務に経営資源を集中させることができ、コストの削減や品質の向上などのメリットを享受することができる一方で、秘密情報の流出や債務不履行など、リスクも同時に発生します。


 このようなリスクを予防しつつ、業務委託によるメリットを活用する上では、適切な受託者を選定することはもちろんのこと、業務委託契約において個別案件に応じた合意事項を規定しておくことが有効な手段となります。


7.メル行政書士事務所にできること


 当事務所では、業務委託契約に関して、以下のサービスを提供しています。業務委託契約に関してお悩みの際には、まずはお気軽にご相談下さい。

  1. 業務委託契約書の作成

  2. 業務委託契約書のチェック

  3. 業務委託契約書の英訳

  4. 業務委託に関する約款の作成・届出

  5. 業務委託に関する法律相談