商品化権許諾契約について



  1. 商品化権許諾契約とは

  2. 商品化権許諾契約の雛型

  3. ロイヤリティーの支払い

  4. 許諾地域と許諾期間

  5. 二次的著作物の取り扱い

  6. 商品化権許諾契約と独占禁止法

  7. 商品化権許諾契約についてのまとめ

  8. メル行政書士事務にできること

1.商品化権許諾契約とは


 「商品化権許諾契約」または「キャラクター商品化ライセンス契約」とは、漫画やアニメのキャラクターデザインなどの著作物について、これらを玩具、衣類、包装、広告などの商品や販促物に使用することを許諾する契約です。「商品化権」という呼称は、商慣習上の名称であり、著作権法上は、著作物の複製権や譲渡権ないしは翻案権の許諾契約として構成されます。


 権利を許諾するライセンサーにとっては、製造設備に対する資本投下や仕入れコスト、在庫リスクなどを負担することなく、商品の販売からロイヤリティーを得ることができるメリットがあります。一方でライセンシーにとっても、キャラクターの有する顧客吸収力を活用することで、商品の売上を向上させることができます。


 海外においては、このようなライセンシングを専門とする事業者がマスターライセンシーとなり、出版社などのライセンサーから許諾された権利を、メーカーや小売店などのサブライセンシーにさらに再許諾することで、大規模なIPビジネスが展開されています。国内では、このような専門事業者はいまだ少数であるため、出版社等とメーカーや小売店が直接契約することが多いと思われます。


 商品化権許諾契約の契約書は、ライセンサーから雛型を提示することが多いため、ライセンシーとしては、許諾期間やロイヤリティーの支払方法など、その契約書案が自社の事業にとって合理的であるかどうか検討する必要があります。


 なお商品化に当たって、第三者から著作権について権利主張されるリスクがある場合、あらかじめ許諾対象の著作権を登録しておくことも考えられます。


2.商品化権許諾契約の雛型


 商品化権許諾契約書の雛型の例は、下記のとおりです。商品化権許諾契約書の締結に当たっては、必要に応じて当事務所などの専門家に相談の上、雛形を修正してご使用ください。


 

商品化権許諾契約


 本契約は、株式会社X(以下「ライセンサー」とする)が、株式会社Y(以下「ライセンシー」とする)に対して、ライセンサーが管理する著作物である○○(以下「本著作物」とする)の商品化に関して、必要な事項を定める。


第1条(商品化の許諾)

第1項

 ライセンサーは、ライセンシーに対し、別紙1に定める著作物である○○を、別紙2に定める商品(以下「本商品」とする)について、以下に定める許諾地域及び許諾期間内に限り、使用することを許諾する。ただし、許諾期間満了前に当事者で合意することにより、許諾期間を延長することを妨げない。


許諾地域:○○

許諾期間:〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで


第2項

 ライセンシーは、許諾期間の始期の〇ヶ月後までに本商品の販売を開始しなければならない。


第3項

 ライセンシーは、別紙1及び別紙2に定める事項を変更しようとするときは、あらかじめライセンサーに通知し、その承認を得なければならない。


第2条(サブライセンスの禁止)

 ライセンシーは、本著作物を自ら使用しなければならず、第三者に対し、著作物の使用を許諾する権利を有しないことを確認する。


第3条(ロイヤリティーの支払い)

第1項

 ライセンシーは、ライセンサーに対し、以下の各号に定めるロイヤリティーを、ライセンサーが別途指定する方法により支払う。


(1)最低保証使用料として、○○円を〇年〇月〇日までに支払う

(2)本商品の製造に対し、使用料として1個あたり○○円を支払う


第2項

 ライセンシーは、ライセンサーに対し、毎月1日から末日(以下「対象期間」とする)までの本商品の製造数量を集計し、翌月〇日までに通知しなければならない。


第3項

 ライセンシーは、前項の通知をしたときは、ライセンサーに対し、対象期間の翌月の末日までに、第1項第2号による定まる対象期間に係るロイヤリティーを支払わなければならない。


第4条(証紙の貼付)

 ライセンシーは、本商品に対し、ライセンサーが送付する証紙を貼付しなければならず、本商品を製造する場合、あらかじめライセンサーに対し、その製造予定数量を通知して証紙の送付を求めなければならない。


第5条(監修)

第1項

 ライセンシーは、本商品の製造に当たり、そのデザインについて、あらかじめライセンサーによる監修を受け、その書面による承認を受けなければならない。


第2項

 前項による監修の結果、ライセンサーが承認を拒否するか又は修正の指示をしたときは、ライセンシーは、その趣旨に従い、再度ライセンサーの監修を受けなければならない。


第3項

 前項までの監修のため必要な場合には、ライセンシーは、ライセンサーに対し、本商品のサンプルを無償で提供する。


第6条(キャラクターイメージ)

 ライセンシーは、本商品の製造販売及び本商品の販売促進活動にあたって、本著作物の顧客吸収力及びキャラクターイメージを損なうことがないようにしなければならない。


第7条(製造物責任)

 ライセンシーは、本商品の製造販売に関し、その品質の確保に努めるものとし、本商品に関して生じうる製造物責任の履行確保のため、PL保険への加入その他の必要な措置を取らなければならない。


第8条(著作権表示)

 ライセンシーは、本商品について、以下の著作権表示をしなければならない。


著作権表示:○○○○/○○○○


第9条 (商標・意匠の登録の禁止)

 ライセンシーは、本商品に関して、本著作物の商標・意匠の登録を行うことはできない。


第10条(第三者による権利侵害)

第1項

 ライセンシーは、本著作物又は本著作物の使用権を第三者が侵害し、または侵害しようとしていることを発見したときは、すみやかにライセンサーに対し、その旨を通知しなければならない。


第2項

 ライセンサーは、前項の通知を受けたときは、自己の責任と費用において、その侵害に対処するものとする。この場合において、ライセンシーは、ライセンサーから求められたときは、必要な協力を行うものとする。


第11条(秘密保持)

 甲及び乙は、本契約及び個別契約に関連して知り得た相手方の営業上又は技術上の秘密を、相手方の事前の承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。


第12条(権利義務の譲渡禁止)

 甲及び乙は、相手方の書面による事前の承諾なく、本契約により生じた権利義務及び契約上の地位を、第三者に譲渡してはならない。


第13条(解除)

第1項

 甲及び乙は、相手方が本契約に違反した場合、相当の期間を定めて催告をし、その期間内に相手方が是正しないときは、本契約を解除することができる。


第2項

 甲及び乙は、相手方において、手形の不渡りがあったとき、差押えの申し立てを受けたとき、破産の申し立てを受けたとき、その他不信用な事実があったときは、直ちに本契約及び個別契約を解除することができる。


第14条(損害賠償)

 甲及び乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければならない。


第15条(有効期間)

 本契約の有効期間は、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までとする。ただし、第6条、第9条から第12条まで、第14条、第16条及び第17条は、本契約終了後も効力を有する。


第16条(誠実協議)

 甲及び乙は、本契約に定めのない事項及び本契約に関する疑義については、相手方と誠実に協議して解決する。


第17条(管轄)

 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。


本契約締結の証として本書2通を作成し、販売店及びメーカーは、記名押印の上、各自1通を保有する。


〇年〇月〇日

ライセンサー:〇〇〇〇ー〇〇

株式会社X

代表取締役 〇〇 印

ライセンシー:〇〇〇〇ー〇〇

株式会社Y

代表取締役 〇〇 印


 

3.ロイヤリティーの支払い


 商品化権許諾契約においてロイヤリティーの支払いは、著作物の使用の対価であるため、契約上の最も重要な要素の一つとなります。ロイヤリティーの支払い方法としては、定額方式、定率方式、分配方式があります。


定額方式:ライセンスの使用による売上や利益にかかわりなく、定額を支払う

定率方式:ライセンスの使用に係る売上の一定割合を支払う

分配方式:粗利(売上ー売上原価)の一定割合を支払う


 定額方式の場合、商品の販売実績に関わりなく定額を受け取れるため、ライセンサーは収益の予測可能性が向上します。一方でライセンシーは定額を控除した残存利益を総取りできますが、売れ残りのリスクを全面的に負担することになります。


 これに対して、定率方式又は分配方式の場合、利益を折半することができますが、販売実績が不調の場合、ライセンサーは十分なロイヤリティーを確保できないおそれがあります。


 またロイヤリティーの発生対象として、製造数量によりロイヤリティーを算定する方法と、販売数量によりロイヤリティーを算定する方法があります。ライセンサーとしては、製造の段階でロイヤリティーを徴収することに合理性があります。


 なお分配方式においては、ロイヤリティーの算定に当たり売上原価を考慮するため、よりフェアな折半が可能となります。一方で売上原価に関する報告書の提出など、ライセンサーによる管理監督コストが発生してしまうおそれがあります。そのため当事者に信頼関係がある場合には、分配方式を選択することも考えられます。


 このようにそれぞれに一長一短がありますが、一般的には、定率方式又は定額方式と定率方式の組み合わせが好んで用いられます。定額方式と定率方式を組み合わせる場合、一定額を最低保証料ないしはミニマムロイヤリティーとして支払った後、商品の売上に応じて、さらにランニングロイヤリティーの支払を行うことになります。


 この場合、ランニングロイヤリティーの支払いにおいては、最低保証料を一定数の販売実績を担保するものとみなして、ランニングロイヤリティーから最低保証料を控除する方法と、控除しない方法があります。


条文例:最低保証料を控除する場合

第〇条(ロイヤリティーの支払い)

 ライセンシーは、ライセンサーに対し、以下の各号に定めるロイヤリティーを、ライセンサーが別途指定する方法により支払う。


(1)最低保証使用料として、○○円を〇年〇月〇日までに支払う

(2)本商品の製造数量が〇個を超過した場合、追加製造数量1個に対し、使用料として1個あたり○○円を支払う


4.許諾地域と許諾期間


 商品化権許諾契約においては、「商品化権」という権利を取引することとなるため、その権利の内容として、許諾地域ないしは許諾期間については、通常の契約以上に重要な意味があります。ライセンシーはその許諾範囲内において著作物を使用する権利を得る一方で、ライセンサーはその許諾範囲内において著作権をライセンシーに対して行使しない義務を負うことになり、それこそが許諾契約の実質となるためです。

 

 許諾地域としては、一般的には「日本」や「アメリカ」など国が単位となります。場合によっては「ヨーロッパ」や「東南アジア」のように地域が包括的に指定されることもあります。また「許諾地域外へ商品を輸出する恐れのある事業者に対しては販売しない」旨を合意するなどして、ライセンシーによる許諾地域の規定の潜脱を防止する場合もあります。

 

 許諾期間としては、半年から2年間程度の間となる場合が多いと思われますが、ライセンシーとしては、その期間内において製造した商品の販売を完了することができるかどうかという観点から、製造コストや最低保証料のような資本投下を回収できるように検討する必要があります。また許諾期間完了時の在庫品の取り扱いについても、あらかじめ合意しておくことが望ましいでしょう。


条文例:期間満了時の在庫品の取り扱い

第〇条(売れ残り在庫の販売権)

 ライセンシーは、本契約の販売期間満了時において本商品の製造済みの在庫品があるときは、その在庫品については、本契約の規定に従い、販売期間終了後も販売することができる。


 ライセンシーにより、ライセンサーが同種の商品について著作物の使用を許諾しないように義務付けられることがあります。このような競業避止義務が課せられる場合、ライセンシーに独占的な使用権が設定されることとなるため、ライセンサーとしては、許諾期間の範囲やロイヤリティーの支払方法について慎重な検討が必要です。


5.二次的著作物の取り扱い


 著作権法上、「商品化権」は複製権や譲渡権ないしは翻案権として構成されるため、原著作物の翻案によって創作された二次的著作物の取り扱いについても、商品化権許諾契約に置いて合意しておく必要があります。


 二次的著作物とは、例えばキャラクターを原著作物とするフィギュアや、漫画を原作とするアニメなどのことを言います。これらの二次的著作物のうち、それ自体に創作性が認められる部分については、原著作物の著作権とともに、二次的著作物の著作者の著作権が成立します。


 著作権は登録を必要とすることなく創作により当然に成立するため、当事者に何らの合意もない場合には、二次的著作物に係る著作権はライセンシーに帰属します。この場合、ライセンサーとしては、例えば同じキャラクターの商品化を別のライセンシーに許諾したときに、二次的著作権を有するライセンシーにより、その著作権の侵害を主張されてしまうリスクがあります。


 そのためアニメ化や映画化のように、二次的著作物の著作権がライセンシーに帰属することが一般的な取引を除き、ライセンサーとしては、以下のような規定により、二次的著作物の著作権についても、ライセンサーに帰属することを明らかにしておくことが考えられます。


条文例:二次的著作物の著作権について

第〇条(著作権の帰属)

 ライセンシーが本商品の製造販売にあたり使用するキャラクターの原画その他の資料の著作権は、著作権法第27条に定める翻案権等および同法第28条に定める二次的著作物に関する原著作者の権利を含め、全てライセンサーに帰属する。


 なお二次的著作物の著作権がライセンシーに帰属することとするときは、ライセンサーに対するその使用権の許諾を義務付けることを検討する必要があります。


6.商品化権許諾契約と独占禁止法


 知的財産のライセンス契約に対しては、知的財産権制度の趣旨に反すると認められるような行為を除いて、原則として独占禁止法は適用されません。そのためこれらのライセンス契約において、許諾地域外でのライセンシーによる知的財産権の行使を制限することは、独占禁止法上の問題を生じません。


独占禁止法第二十一条: この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。


 ただし特許権等の産業財産権においては、メーカーによる小売価格までライセンサーが決定することは、自由競争における事業活動への重大な制約になるとして、独占禁止法上「再販売価格の拘束」に当たり、禁止されています。これに対して著作権については、さらに特例的措置が定められており、ライセンサーはメーカーによる小売価格を決定することができます。


独占禁止法第二十三条第一項: この法律の規定は~(中略)~相手方たる事業者とその商品の再販売価格~(中略)~を決定し、これを維持するためにする正当な行為については、これを適用しない。


同条第四項: 著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、第一項と同様とする。


 そのため商品化権許諾契約においては、製品のデザインに対する監修とともに、その小売価格等についても、ライセンサーによる事前の承認を求めることが広く行われています。小売価格を一定額以上に維持することにより、ブランドイメージの毀損を防ぎ、ランニングロイヤリティーの支払いを担保することができます。


条文例:ライセンサーによる小売価格の承認

第〇条(小売価格の承認)

 ライセンシーは、本商品の小売価格を変更する場合は、あらかじめライセンサーによる承認を受けなければならない。この場合において、ロイヤリティーの額を変更する必要があるときは、当事者の協議の上、ロイヤリティーの額を変更することができる。


7.商品化権許諾契約についてのまとめ


 商品化権許諾契約とは、著作物を利用した商品の製造販売を許諾する契約であり、著作権法上の複製権や譲渡権ないしは翻案権の許諾契約に当たります。ロイヤリティーの支払方法としては、定額方式、定率方式および分配方式があり、とりわけ許諾期間と許諾地域が契約の重要な要素となります。また二次的著作物の著作権の帰属についても検討しておく必要があります。


8.メル行政書士事務にできること


  当事務所では、商品化権許諾契約に関して、以下のサービスを提供しています。商品化権許諾契約に関してお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

  1. 商品化権許諾契約の作成・チェック

  2. 商品化権許諾契約に関する法律相談

  3. 著作権の登録

  4. 著作権に関する相談