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業務委託契約とは?テンプレートと書き方

更新日:4月1日




業務委託契約とは 


業務委託契約とは、「業務」の全部または一部を外部に「委託」することを内容とする契約です。売買契約や秘密保持契約と並んで、ビジネスシーンにおいて活用されることの多い契約類型であると言えます。個人との契約の場合、とりわけ委任契約のときには、労務を提供するという点において近似するため、雇用契約との区別が重要です。雇用契約であるにもかかわらず業務委託とした場合、偽装請負として労働基準法に違反してしまうことがあるので注意しましょう。


以下は、簡易な業務委託契約書のテンプレートの一例です。


業務委託契約書簡易テンプレート


本契約書の末尾に記名押印した委託者と受託者とは、本契約書に記載の通り、業務委託契約を締結したので、その成立の証として、本契約書の原本2通を作成し、各当事者がそれぞれ1通を保管する。


第1条 (業務の委託)

  1. 委託者と受託者は、法を遵守し、互いに協力し、信義を守り、各々誠実に本契約を履行する。

  2. 委託者は、受託者に対し、[○○○](以下「本件業務」)を委託し、受託者はこれを受託した

  3. 受託者は、委託者からあらかじめ承諾を得なければ、本業務一部でも再委託することはできない。

第2条 (委託代金)

  1. 委託者は、受託者に対し、毎月[○○○]円を翌月[○○○]日までに支払うものとする。

  2. 委託代金の支払いは、[○○○]による。振込手数料、支払手数料その他の費用は受託者がこれを負担する。ただし受託者は、源泉所得税を控除することができる。

第3条 (解除権)

  1. 委託者及び受託者は、相手方が本契約に違反した場合、相当期間を定めて書面(電子メール等含む)をもって催告し、その期間内に履行がない場合は、書面による通知により、この契約を解除することができる。ただし期間を経過したときにおける債務の不履行が、取引上の社会通念に照らして軽微であるときはこの限りではない。

  2. 委託者及び受託者は、相手方において次に掲げる事由のいずれかがあった場合は、相手方に対する書面による通知により、ただちに本契約を解除することができる。

イ) 強制執行、仮差押・仮処分又は公租公課の滞納処分を受けたとき

ロ) 破産・民事再生・会社更生・特別清算等の開始決定があったとき

ハ) 手形・小切手の不渡り等、支払不能の状態に陥ったとき

ニ) 任意整理の実行その他、前3号に準ずる信用不安の事実があったとき


第4条 (一般条項)

  1. 本契約の契約期間は、[○○○]から[○○○]までとする。

  2. 委託者及び受託者は、相手方からの書面による承諾を得なければ、本契約の当事者としての契約上の地位及び本契約から生ずる権利義務を、第三者に譲渡又は継承させることはできない。

  3. 本契約に定めのない事項及び本契約に関して生じた疑義は、委託者と受託者が誠実に協議の上解決するものとする。


業務委託と商法 


また商法においても、特定の業種や業態については、「場屋経営者」のする「寄託」についての特則などが定められています。さらに「請負」の中でも、「運送」や「建設」に該当する契約は、道路運送法や建設業法等の各種の業法による規律の対象ともなることがあります。このような場合、約款の所轄官庁への届出義務などが発生します。


業務委託のタイプ


業務委託契約は、委任契約である場合と請負契約である場合があります。これらのうちのいずれに該当するかによって、委託者の権利や受託者の義務、費用負担の分担など、その契約内容に違いが生じてきます。なおその業務委託契約が委任契約であるか請負契約であるかは、契約書の表題が「委任契約」「準委任契約」または「請負契約」であるかどうかのみならず、その契約内容がいずれに該当するかによって総合的に判断されます。


民法と異なる規定をすることはもちろん可能ですが、その場合、他の規定と整合的かどうかを検討しておく必要があります。


委任の場合


受託者は委託者の業務を「代行する」という側面が強く、委託業務の責任や費用を委託者が負担することになりますが、委託者は、業務状況の報告の徴求などを通して、受託者をコントロールすることができます。ただし作業場所、作業時間、業務の遂行計画などの指定の程度によっては、雇用契約の実態を

有してしまう場合があります。その場合、下記に詳述する「偽装請負」の問題が生じる可能性があります。そのため業務委託の場合は、業務の遂行に関しては、受託者に裁量の余地が残されていることが原則となります。


また民法上は委任契約は無報酬が原則であるため、特約として報酬に関して書面上明確にしておく必要があります。なお業務を委任するだけでは通常相手方に委託者を代理する権限は生じないため、何らかの手続きを代行させる場合には、権限代理についてもその範囲と期間を明確にしておきましょう。


請負の場合 


業務委託契約が「請負」である場合には、受託者は委託者の業務を「納品する」という側面が強く、委託業務の責任や費用は受託者が負担する一方、その成果物を作成する方法は受託者の自己責任として一任されており、委託者による受託者へのコントロールは、特約がなければすることができません。ただし請負契約は売買と同じく「双務契約」であり、委託者は受託者に対して報酬を支払う義務を負っています。請負の場合はなんらかの成果物があることが前提とされるため、その成果物に関する瑕疵担保責任(改正後民法において「契約不適合責任」)についても定めが必要です。


業務委託と雇用契約・労働契約 



業務委託契約は、業務の遂行を相手方に委ねるという点において「雇用契約」や「労働契約」と類似します。実際のところ、個人事業主が経営する店舗内の従業員等については、それが業務委託であるのか雇用契約であるのか明確となっていない場合もあるかと思います。


雇用契約」においては、労働者は「労働」を提供する義務を負います。ここで「労働」とは、使用者の「指揮命令」に従い、その業務を遂行することを指します。そのため業務委託契約と雇用契約を区別する指標は、そこに指揮命令関係があるかどうかによります。


委託者が就業時間や休憩時間、就業場所を指定し、業務の方法について個別具体的な指示を行い、機材や原材料その他を提供していたというような場合、それが雇用契約である可能性が高くなります。一方で、就業時間や就業場所、業務の方法などが受託者に一任されている場合には、それが業務委託であると認められやすくなります。


業務委託契約としていた契約が実質的には雇用契約であった場合、最低労働賃金や労働時間規制、労働安全衛生などについて、労働基準法その他の労働法の規律対象となり、「偽装請負」と認定され、これらの法令に違反してしまう場合があるため、注意が必要です。



業務委託をする目的 



業務委託ないしはアウトソーシングをする場合、なぜその業務を外部に委託するのかについて明確にしておくことが、業務委託契約書を作成する上で有益です。これにより、契約書で相手方にどのようなことをしてほしいか、ほしくないかを検討することができ、具体的に契約条項を組み立てることができます。


コストの削減


事業活動においては、必ずしも本業とは言えないような付随業務や人事総務経理などのバックオフィス業務に対しても、事業規模に応じた設備投資や人件費が必要となります。このような周辺業務は、本業におけるようなノウハウの蓄積や資本投下がなされるとは限らないため、全体として能率が低下する原因となります。


また比較的小規模な企業であれば、バックオフィス業務のための人員を配置することが現実的でない場合もあります。こうした周辺業務を外部に委託することにより、設備投資や人件費を削減することができ、コストを抑えることができます。


こうしたコストの削減を目的として業務委託を行う場合、業務による成果が具体化するタイミングとの兼ね合いにおいて委託料金の支払いタームが適切か、経済状況の変化や委託数量等による委託料の見直しができる設計となっているかどうかなどを検討する必要が出てくるでしょう。


コアコンピタンスへの集中投資


業務委託によるコストの削減により、経営資源を中核業務に投資することができます。人件費や設備投資を中核業務に集中させることで、ノウハウの蓄積や能率の向上を見込むことができ、更なる競争優位性の確保に資することになります。


電子部品やアパレルをはじめとする製造業においては、スマイルカーブ理論に基づき、競争優位の確保に継続的な資本投下を要する製造組立工程を外部に委託することにより、高い利益率を実現する経営手法が取られています。これによって製造組立工程への大規模な資本投下が不要となり、高付加価値を創出することができる上流の企画開発段階と下流の小売流通段階に注力することができます。


国内において消費者の選好が成熟していく中で、製品やサービスに独自性やオリジナリティを打ち出すために、このようなコアコンピタンスの確立がより重要性を増しています。業務委託を活用することにより、M&Aや事業譲渡などドラスティックな手法による企業再編によらなくとも、コアコンピタンスへの経営資源の集中を実現することが可能となります。


こうした業務の取捨選択のために業務を委託する場合、委託業務の内容について、仕様書、サービスレベル合意書などの付属文書で明確となっているか、窓口の一本化など、コミュニケーションコストの増大を抑える措置を取っているかなどを検討しておくことが望ましいでしょう。


品質の向上


受託業務のための設備や人材、ノウハウを備えた専門業者に委託することにより、その業務の品質を向上させることが期待できます。


業務委託でカバーするべきリスク



業務委託契約と秘密保持 


業務委託に当たって、製品の開発上のノウハウや営業上の顧客リストを受託者に開示しなければならない場合があります。こうした技術情報や営業情報は、必ずしも特許権などの知的財産権や不正競争防止法上の営業秘密として防衛できるとは限らないため、受託者から流出するリスクや受託者が目的外利用をするリスクがあります。


またバックオフィス業務を委託する場合には、雇用管理情報などの従業員の個人情報を開示する必要があるため、こうした個人情報の管理上のリスクもあります。


このような秘密情報の流出を防止するためには、適切な受託者を選定することはもちろんですが、受託者の情報管理を契約により担保することも、あわせて検討する必要があります。開示情報の中でも秘密情報を特定したり、秘密情報の複製を制限したり、秘密情報を受領できる関係者を特定することなどが有効です。


 条文例:秘密情報の特定 


第〇条 秘密保持

受託者は、本業務に関連して知り得た以下の各号に該当する情報(以下「秘密情報」とする)を、委託者の事前の承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。

  1. 〇〇の精製に関する技術上のノウハウ

  2. 委託者の取引先に関する営業上の情報

  3. 委託者の従業員の雇用管理情報その他の個人情報

  4. 委託者が秘密として指定した情報

  5. その他上記の各号に関連する一切の情報


 条文例:秘密情報の複製の制限 


第〇条 秘密情報の複製

受託者は、本業務の目的のため必要な範囲内に限り、秘密情報を複製することができる。この場合において、複製により生じた情報も秘密情報に該当するものとする。


業務委託と債務不履行 


業務委託契約もまた外部との取引関係であるため、納期の遅れや品質の瑕疵などの受託者による債務不履行のリスクがあります。こうした危険を予防する上では、契約において品質保証条項について合意するほか、受託者に対し、責任者の特定などの品質保証体制の管理を義務付けることも検討する必要があります。


また債務不履行が生じる恐れが生じた場合に、委託者がその差し止めをすることができることを契約に明記することによって、民事保全制度を活用できる可能性が高まります。


さらに債務不履行に対する損害賠償責任の範囲や損害賠償額をあらかじめ定めておくことにより、委託者の予測可能性が向上するとともに、受託者に対して、不履行を抑止する効果を期待できます。


ただし違約金などの損害賠償額の予定は、契約交渉において争点化しやすい条項であると言えます。そのため早期の合意を急ぐときには、損害賠償責任の範囲を明確にすることにより対応することが望ましい場合もあります。


 条文例:品質の保証 


第〇条 品質保証

 受託者は、本業務の成果物の品質に関して、以下の各号を保証する。

  1. 仕様書に定める性能、規格その他の要件に適合すること

  2. 本業務に関連する法律、政省令、条例その他の法令上の品質基準に適合すること

  3. 第三者の知的財産権を侵害していないこと


 条文例:損害賠償責任の範囲の特定 


第〇条 損害賠償

委託者及び受託者は、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、その通常損害(合理的な範囲の弁護士費用を含む)及びその損害発生時において予見すべきであった特別損害を賠償しなければならない。


信用不安が生じるリスク


委託者に信用上の不安がある場合には、対価の支払の不履行という形で、委託者の債務不履行が生じる可能性もあります。また受託者が、破産や会社更生その他の清算手続きや再生手続きを開始した場合には、業務委託契約が破産管財人等により解除されてしまう恐れがあります。


このような信用リスクに備えるため、信用調査ができる場合にはそれによることができますが、業務委託契約においてそのような調査が常に可能であるとは限らないため、契約により備えておくことも検討しなければなりません。


期限の利益喪失条項を契約書に挿入することにより、支払不能や不渡り、破産の申立てや差押えなど信用不安が明らかになったタイミングで、ただちに契約関係を清算することができるようにしておくことが有効です。


 条文例:期限の利益の喪失 


第〇条 期限の利益の喪失

委託者及び受託者は、手形の不渡りがあったとき、差押えの申し立てを受けたとき、破産の申し立てを受けたとき、その他不信用な事実があったときは、相手方に対して負担する一切の債務について、期限の利益を失い、相手方に対し、直ちにその全部を弁済しなければならない。



業務委託と独占権


販売代理店契約や特許実施権許諾契約などを締結した場合には、特定の地域や期間について、委託者が他の受託者に販売代理権や特許実施権を与えないことや委託者が自らこれらの権利を行使しない旨が合意されることがあります。


受託者としては、競合を排して独占的に権利を実施できるため、メリットのある取り決めです。また委託者としても、自ら販路を開拓するノウハウや経営資源がない場合に、受託者の販路を活用してその権利を市場に出すことができるメリットがあります。


ただし一方で、受託者がこれらの権利を誠実に行使しない場合に、本来その販売権や特許実施権から得ることができた収益を得られない恐れがあります。たとえば、ヨーロッパでの販売について独占的な販売代理権を与えたにもかかわらず、受託者が一向にヨーロッパでの具体的な宣伝活動や販売活動を行わないような場合が考えられます。


このようなリスクを予防するために、業務委託にあたって独占的なライセンスを付与する場合には、受託者の業務状況の報告を書面で徴求できる権利を規定したり、契約の見直しができるよう、更新条項を付した上で契約期間を短期とする方法などが考えられます。


 条文例:受託者の報告 


第〇条 報告

受託者は、委託者から求められたときは、遅滞なく、本製品の販売数量、種類、販売代金その他の本業務の状況について、書面で報告しなければならない。


 条文例:契約の見直し 


第〇条 有効期間

本契約の有効期間は、契約締結時から1年間とする。ただし、期間の満了までに委託者と受託者で合意したときは、本契約を更新することができる。


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