解除条項について

更新日:11月8日



 目次   

  1. 解除条項とは

  2. 解除の効果

  3. 解除の要件

  4.  解除と同時履行の抗弁権

  5.  解除と留置権

  6. 解除の制限

  7.  解除権の不可分性

  8. 解除権の消滅

  9.  相手方による催告

  10. 解除と損害賠償

  11. 解除と民法改正

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解除条項とは


解除条項とは、当事者が契約に違反した場合に、相手方に対して契約を解除する権利を付与する規定であり、例えば以下のような条項が置かれます。


契約の解除当事者は、相手方が本契約に違反した場合において、相当な期間を定めてその是正を催告し、その期間内に是正がないときは、本契約を解除することができる。

これに対して、「当事者は、相手方が本契約に違反した場合、本契約を解除することができる」として、「催告」を不要とする場合もあります。ただしこのような解除条項では相手方から突然に契約の解除を通告され、原状回復や再契約先の選定などの事後対応に窮することが考えられ、原則として2週間程度の催告期間を設けることが望ましいと言えます。


なお解除条項とは別に解約条項が置かれることもあります。「解約」は解除とは異なり、当事者の契約違反を前提とせず、合意により契約関係を終了させる余地を残したいときに用いられます。たとえば「当事者は、少なくとも3カ月以上前に通知することにより、本契約を解約することができる」のように定められます。


近年においてはいわゆる「サブスクリプション方式」のサービスがBtoCのみならずBtoBの取引においてもみられるようになりつつあることから、このような場合、解約は契約更新の中止として構成することも可能です。いずれにしても、解約がいつでも可能なのか、それともなんらかの正当事由(転居や事業の廃止など)を要するとするかは、検討しておく必要があります。


このように解除条項の趣旨は、契約違反があったときに、当事者をその契約関係から解放することで、履行や催告の負担をなくし、新しい契約相手を探す自由を確保することにあります。


解除の効果


民法545条当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

解除権を行使したときは、民法545条により、当事者はそれぞれ「原状回復義務」を負います。したがって解除は契約関係を清算する効果を有するということになります。例えば売買契約において契約が解除されたときは、売主は売買代金を返還する義務を負い、買主は目的物を返還する義務を負います。


これに対して、当事者が代金の支払いや目的物の支払いをしていなかった場合には、単にそれらの義務が消滅し、契約がされなかった時と同じ状態となります。


民法545条3項第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

また契約の目的物から「果実」が生じる場合には、原状回復として、これらの果実も併せて返還する必要があります。法文上の「果実」とは、賃貸物件から生じる賃料収益のような「法定果実」または果実や牛乳、鶏卵のような「天然果実」のことを指します。


第三者の権利を害することはできない」とは、例えば解除に先立って売買の目的物を買主がすでに第三者にさらに転売してしまっていた場合、売主はそれをその第三者から取り戻すことはできないということを意味します(その人は、まっとうな売買により過失なく買主から目的物を購入していたのに、自らのあずかり知らない前所有者の行為により、購入した目的物を後から失うことは不公平であるため)。


この場合には、売主は目的物の引渡請求権に代えて、買主に対する損害賠償の請求権を取得します。ただし不動産の場合には、移転登記がされる前であれば、登記を先に備えることで、売主が第三者から不動産を取り戻すことができます(だからこそ、司法書士が決済の場に同席して決済後即座に登記を行うことが慣例となっています)。


なお共同研究契約など秘密情報を相手方に開示する契約を解除した場合には、原状回復の一環として、受領した秘密情報の返還・廃棄をする必要があります。契約書において契約解除時の秘密情報の取り扱いについてあらかじめ合意しておくとともに、解除後にも、現物の返還や複製の処分などが確実になされるよう、「廃棄証明書」を交付するなどの方法により、当事者間で確認しておきましょう。


解除の要件


解除をすることができるのは、冒頭の規定例で言えば「当事者が契約に違反したとき」となります。たとえ相手方が契約上の義務を履行していない場合であっても、相手方に「同時履行の抗弁権」や「留置権」があるときには、「契約に違反した」とは言えないため、解除をすることはできません。


解除と同時履行の抗弁権

民法533条双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

同時履行の抗弁権」とは、売買のように当事者の双方が対価的な義務を負う契約において、一方当事者が義務の履行を完了しない間、他方当事者に対して、その義務を履行する必要がないという抗弁を与えるものです。例えば、売主が目的物を引き渡さない間は、買主は代金を支払う必要がありません。この場合には、売主は買主の代金未払いを理由として契約を開場することもできません。ただし契約において異なる合意をしたときは、もちろんその合意が優先します。


解除と留置権 

民法295条(留置権):他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

留置権」とは、物に関して生じた債権について、その履行を受けるまでその物を留め置くことができるという権利です。例えば時計の修理をした修理業者は、修理代金の支払いを受けるまではその引き渡しを拒むことができます。


留置権と同時履行の抗弁権とは、機能的には類似した権利ですが、留置権は物について生じる物権であるため、第三者に対しても主張することができます。これは、「物権の絶対性」と呼ばれるもので、人が人に対して有する債権と違い、物権は誰に対しても権利を行使することができます(A社の従業員が給与をB社に請求することはできませんが、私有地への立ち入り禁止のような土地やモノに関する権利は、誰に対しても有効です)。


例えば時計の修理業者の事例でいえば、修理の依頼人とは別に時計の所有者がいる場合、同時履行の抗弁権をもってしては所有者からの返還請求を拒むことはできません。これに対して留置権がある場合には、修理業者は、所有者に対しても返還する必要がありません。


解除と催告


解除条項において「相当な期間を定めてその是正を催告し、その期間内に是正がないとき」のように催告を解除の要件として合意した場合には、解除をする上で催告も必要となります。契約違反を理由として契約を解除する場合には、相手方との紛争となる可能性もあるため、内容証明郵便や電子メールなど、催告の内容と日時が証明できる手段により、催告を行うことが望ましいでしょう。

 


解除の制限



解除権が発生しても、以下のように、その行使が制限されたり、いったん発生した解除権が消滅する場合があります。


債権者に帰責性がある場合

民法543条債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

自ら相手方の契約違反を招いた当事者は、その契約違反を理由として解除をすることはできません。例えば製造委託契約において、委託元が仕様書を誤記したために、当初の意図とは違う製品が受託者から納品されたとしても、それを理由として契約を解除することはできません。


解除権の不可分性

民法544条当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。

当事者が複数である場合には、解除はその全員で行使する必要があります。これを「解除権の不可分性」といい、民法544条において規定されています。


解除権の消滅

民法548条解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

契約を解除することができることを知りながら、契約の目的物を破損したり破棄したり、あるいは原状回復が困難な加工を施した場合には、解除権は消滅します。


例えば売主が注文に不足する数量の製品しか引き渡さず、不足分を引き渡していないという状況で、買主がそうした事情を知りつつ、受領した製品を他の製品に加工した場合には、もはや買主はその売買契約を解除することはできません。ただし不足分の引き渡しの請求は、当然ながら可能です。


相手方による催告

民法547条解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。

解除権が発生した場合、相手方は、解除権を有する当事者に対して、解除権を行使するかどうかを催告することができます。これに対して返答をしなかった場合には、解除権は消滅します。契約が解除されるかどうか不明な状態が持続することから相手方を保護するための規定です。


解除と損害賠償


契約の解除をした場合であっても、その契約違反により生じた損害については、さらに損害賠償をすることができるのが原則です。これは、民法545条3項により定められています。

民法545条3項解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

このことを契約においても明確とするため、解除条項においても「本条項による解除をした当事者は、さらに損害があるときは、相手方に対し、損害賠償の請求をすることを妨げない」などと規定することがあります。また逆に、損害賠償の請求は解除をしなくともすることができます。このように解除と損害賠償は、解除が当事者を契約関係から解放する権利でるのに対し、損害賠償は損害の公平な分担を請求する権利であり、別々の権利であるといってよいでしょう。


ただし損害賠償の内容として、「債務の履行に代わる損害賠償」を請求するためには、その契約を現に解除した場合か、もしくは解除することができる場合でなければなりません。例えば通常の市価よりも安い価格で目的物を売り渡す売買契約を交わした場合に、売主がその目的物を納品しないときに通常の市価と売買代金の差額を損害として請求することは、「債務の履行に代わる損害賠償」に当たります。


関連記事:「損害賠償条項について


解除と民法改正



解除権の法的性格をめぐっては、民法の制定以来長く学説による議論の対象となってきました。2020年4月より施工された改正民法は、こうした議論を立法的に解決し、改正前の民法を前提として、それまで通説とされてきた立場を否定しました。


改正民法においては、債権者は、債務者に「債務不履行」があれば直ちに債権者は契約を解除することができます。「債務不履行」とは、解除条項の文言における「契約に違反した場合」に意味内容として近く、「履行不能」「履行遅滞」「不完全履行」を指します。「履行不能」とは、絵画の売買契約においてその絵画が焼失したときのように、契約が履行できないこと、「履行遅滞」とは、納期に納品が間に合わないこと、「不完全履行」とは、納品はしたが品質が契約通りでない場合などを指します。債権者は、これらの事由があれば、債務者の事情にかかわりなく、契約の解除が可能です。


ただしこのような改正民法の考え方は、それまでは支配的な考え方ではありませんでした。従前の通説においては、債権者が解除権を行使する上では、債務者に「帰責性」と「違法性」が必要とされていました。「帰責性」とは、債務者の落ち度であり、例えば納期に間に合うように合理的な努力をしなかったことなどが当たります。「違法性」とは、債務者に債務不履行を正当化する同時履行の抗弁権のような権利がないことを指します。このように解除されてもやむを得ないというような事情が債務者にある時に限って、解除ができるとしていたのです。


このような立場の違いは、解除の性格をどのようにとらえるかにより生まれたものです。改正民法の立場は、解除を「契約関係からの解放」の権利として解釈するのに対し、従前の通説は、解除を「債務者に対する制裁」としての性質を有する権利として解釈してきたため、このような違いが生じました。


ただし改正民法はすでに施行されているため、施行日以降に締結する契約においては、改正民法の立場を前提として、契約書中の解除条項を検討する必要があります。もし民法の規定とは異なる合意をする場合には、そのことが明確となるように規定しなければなりません。


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